世界と闘う技術を武器に
業界で働く若者に夢を与え続ける 日本電鍍工業株式会社
ものづくりは質の時代
技術力に自信を持つ同社では複雑な形状のものや難めっきについて、さまざまな技術提案で販路を拡大してきた。昔は亜鉛めっきと化学研磨が中心だったが、今では銀、錫、亜鉛と何でも扱う。特にアルミ上へのめっき加工は大手工場が難色を示す難加工であるが、同社はこの分野に高い技術を持つ。銅線に代表されるように優れた電気伝導性を持つ銅素材は重宝され、活用されているが、重量という欠点がある。軽いアルミにめっき(酸化皮膜)の施しが可能になれば、軽量の電気伝導素材が可能になるため、大手発電所などで導入が加速している。従来は難しかった技術を開発する街角の工場は、一丸となって世界と戦う。
盃を交わして組合活性
大阪府のめっき工業組合は最盛期の500社から200社にまで減少。青年部は高齢化が進み、9支部から4支部へと減少した。危惧を覚えた寺内氏は仲間と組合における交流の仕組みを見直した。ハードルの高い座学の勉強会を減らし、大手工場見学などを開いた。参加者は高い技術レベルを目の当たりにし、業界に感動と希望を持った。こういった新たな取り組みで他業種から参加する人も出現し、風が吹いた。青年部はフランクに語り合える飲み会を開催し、若手社長の参加を促した。裾野を広げる一方で、地味な芯の部分もしっかり抑える。緩急の両輪で組合の雰囲気が明るく変化していく。業界の活性化なくして自社の活性化はない、と寺内氏は考える。
若手を育てる経営者
もうひとつの核として取り組むのが若手育成。若者が活躍しているイメージがないと、業界は盛り上がらない。とはいえ、ゆとり世代と呼ばれる若者達の教育は手こずる。苦労を嫌がり即採用を求める若者達はすぐに入ってすぐに辞めてしまった。親の意見に左右される彼らに対して「自分がどうしたいのか。どういう働き方をしたいのか」と問いかける。育成は時には優しく、時には厳しく接する。経営者はゆとりをもった長期的視点が大切。同社では「仕事が怖いから」と逃げて帰った若手従業員が今では現場の監督として指揮するまでに成長している。